東京高等裁判所 昭和49年(ツ)40号 判決
しかし、動産売買の先取特権は売買の目的物の上に存する権利であって債務者が目的物を第三者に引渡した後はその動産につき先取特権を行使することはできず(民法三三三条)先取特権者が目的物の対価に対して物上代位によりその権利を行おうとする場合には、その払渡または引渡前に、先取特権者において差押をしなければならない(民法三〇四条)。
本件の場合、被上告人が破産会社に売渡しその上に先取特権を有していた商品は、破産会社から訴外四社に対し売渡され、その引渡まで了していたというのであるから、被上告人は破産会社が訴外四社に対して有する代金債権に対し先取特権に基づく物上代位権者として他の債権者に優先して弁済をうけるためには、右代金債権につきその払渡前に自ら差押をすることによってその債権を特定させるとともに他の債権者に対しその優先権を公示保全しなければならないと解するのが相当である。この理は本件動産売買の先取特権の如き、本来法律上当然に生ずるもので、そのため特に公示方法のないものにおける物上代位において他の債権者及び第三債務者等と先取特権者との利害の調節を考える場合最もよく妥当する。したがって右差押をなさない状態のままではまだ他の債権者に対し優先性を主張することはできず、その間他の債権者により差押転付命令がなされ、あるいは破産宣告があれば、もはやその優先弁済の権利を行使しえなくなるものといわなければならないのである。この場合右代金債権は自ら差押をすれば何時でも優先押を保全しうるものであるからといってそのことだけで右債権が当然債務者の一般財産ないし破産財団の中で別異の性質を帯有するものとすることはできない。そうだとすれば先取特権者である被上告人が右代金債権について自ら差性をしないで破産会社からこれをもって代物弁済をうけたものとするならば、特に否認を免れるべき特段の事由のない限り、かかる破産会社の行為を目して否認の対象とならないと解することはできない。
(浅沼 田嶋 加藤)